住宅購入を推進するための税制優遇処置「住宅ローン減税」が、この超低金利時代の状況を考慮して、制度変更されようとしています。変更概要とその影響についてご説明いたします。
想定する読者
- 今後新しく住宅購入を検討される方
- 住宅ローン減税についてあまりよくわからないなという方
- 節税に興味ある方
まず住宅ローン減税とは
新しく住宅を購入した際に住宅ローンの負担軽減を国策として支援してもらえる制度です。詳細は過去の記事をご覧ください。
今回の制度改定の議論は、住宅ローン金利が超低金利となっている現在において、借入期間の1~10年における借入金額の"1%"の支援が妥当であるかどうかという議論から始まっています。変動金利であれば、1%を切っているのが常の状況において、いわゆる逆ザヤという借入している人の返済支援を超えて、資産を増やせてしまうという状況であるから課題とされております。
どう捉えるべきか
下記で制度に関しての説明はしますが、あまり多くの方には痛みは限定的であると考えています。というのも、制度自体は下記で説明しますが、逆ザヤを利用して資産運用しようと思い、あえて頭金を入れずに資産があるにも関わらず繰り上げ返済しないようなケースでしか当てはまらないからです。そのため、"家を買うこと"の手段としてローンを捉えている方には、過度に反応しなくてよいと考えます。
※以下正確な情報は行政からの通知にて併せて確認してください。
現在の住宅ローン減税をおさらい
1〜10年目まで
住宅ローン残高の1%について、所得税額控除がされます。控除額上限は40万円/年ですが、長期優良住宅に認定されている場合は50万円/年まで可能です。こちらは新築物件に限らず、中古物件でも金額の差はありますが、適用されるものです。
11〜13年目まで
意外に見落としがちですが、この3年間は上記の借入残高の1%もしくは、建物価格の2%÷3のどちらかが適応されます。地価の高い地域に住んでいる方は、大方建物価格側が適応され、10年目までの控除からは大きく負担が増えることになります。影響するのは戸建ての方が主になります。
改訂案
今回改正対象とされるのは逆ザヤ状態になっている部分とされており、住宅ローン残高の1%ではなく、住宅ローンの利息分相当といった案が検討されております。制度の主旨からすると、超低金利時代にはやむを得ないと考えられます。
どれだけ影響があるか。
※2020/12/20時点の情報かつ、制度変更後の方のみに適用される想定です。
・もともと資産運用として捉えていない方
3,000万の住宅ローン残高があれば、30万円/年が所得税控除されていたところが、変動金利で借りているような方であれば、最低金利で0.5%を切る時勢なので、"ざっくり"で半分近く控除額が減ります。そのため、給与における所得税が増えるため、手取りの控除による増え額が少し減ることになります。
・資産運用と考えていた方
住宅ローン減税での1%と借入金利の差が大きくかつ借入額が大きいほど運用益が増えるので、頭金を絞って借入額を多くし、繰り上げ返済も減税期間は控えるという動きを想定しているかと思います。この金利差が生まれなくなるので、実質資産運用としての利幅は期待できないという可能性が出てきます。
・変動?固定?どちらを選ぶ
少し違う観点で、借入時にどちらの住宅ローンタイプを選択するがありますが、変動におけるリスクが増えるという見方もあります。上記にて資産運用とまでは考えていなくても、変動金利における金利上昇分に対する予備費がためる期間だととらえた場合、変動金利の上昇が直接的に家計に影響を与えることになります。こちらも、"ざっくり"ですが、固定金利を1.5%とした場合、これを下回っている期間の金利差分×期間の面積と上回った際の金利差分×面積を比較して、固定の方がリスクを低減していると捉える考え方も出てきます。
税収確保に試行錯誤している感は感じますが、制度の主旨からするとそこまで理解の出来ない変更ではありませんが、住宅購入を促したいのか需要を抑えたいのかは今後も要チェックです。ひと昔前のよりも、借入金額が上昇傾向にあったり、住宅価格が高騰している、さらには住宅が過剰になってきているなど、今後変化が想定される分野ですので、引き続きチェックですね。