柴山プランを語るの第3回はAR/VRです。スマートフォンについては相当数が普及していますが、まだまだAR/VRについては途上ですが、教育的な価値は非常に期待されているのでご紹介します。
想定する読者
- 教育に関係する方々
- IT×教育ビジネスに関係する方々
- 日本の教育の行く末に不安のある方
- AR/VRの活用に関心がある方
★これまでの柴山プラン解説
AR/VRとは
AR:Augmented Reality(拡張現実)
VR:Virtual Reality(仮想現実)
正確な呼称は上記です。バーチャル度合からするとAR<VRです。
イメージを持って頂きやすいように簡略に説明します。
AR
スマホのカメラで写真や動画を撮る際に、当たり前ですが自分の目で見ているものが記録されます。しかし、AR技術を用いることでカメラのレンズ越しには目には見えないものが表示されるということから、リアルな世界+αの拡張現実とされています。
VR
簡単にお伝えすると、ゲームの世界と同じです。ただテレビゲームのように平面の液晶画面を見ながらではなくて、没入型と言われるデバイスで映像を見ます。昔?展望台などにあった双眼鏡のような形のものです。
教育現場での役割は?
これまで、教育現場で提供できる教材としては紙媒体の教科書、もしくは教科書会社などで作成された教育用の映像(ビデオやDVD)です。ちょっと進んでインターネットを教室のプロジェクタや大画面ディスプレイに映し出すこともできる学校もあるかと思います。印刷技術、映像技術の進歩により鮮明に表現することはかなり充実してきますが、臨場感という部分までは到達していません。
では、それの何が不足事項になるか。
歴史や理科の実験におけるリアリティはコンテンツをリッチにすることに貢献します。危険で実験することが出来ないものや季節が違うから実際には見ることが出来ないものなど。臨場感が加わることで、記憶の定着や好奇心をくすぐることにつながると期待されます。
文部科学省のスタンス
令和2年の段階では、まだ教育現場でどう活用するが良いかということを文科省も模索している段階です。下記のように、まずは専門性を身に着けるための先端技術活用として、専門大学での実証が企画されています。
https://www.mext.go.jp/content/20200508-mxt_shougai01-000007018_1.pdf
文部科学省「R2年度予算要求」
上記の実証に採択された教育機関が以下です。
https://www.mext.go.jp/content/20200929-mxt_syougai01_01.pdf
ここから抜粋しますと、実証される職業訓練は以下です。
- 救急救命士
- 美容師
- 動物看護
- 建築/まちづくり
- 自動車整備
VRで出来ること
ARとは異なり、本格的なVRの利用にあたってはOculasのように専門のヘッドマウントディスプレイを用います。(HMDと略されます。)こちら、絵の通り、頭に装着するものだけでなく、左右にコントローラーのようなものを握って利用します。このコントローラーにトラッキングという動作を検知する仕組みが備わっています。つまり、VR空間内で右手を上げたければ、右手のコントローラーを上にあげるといった具合に連動します。Oculasでは、このコントローラーにボタンなどもついているので、VR空間内に表示されるディスプレイや仮想キーボードで文字の選択などが可能です。使ってみるとわかりますが、かなり正確かつスムーズに動作を検知してくれます。
VRが立体に見える仕組み
よく映画館で目にする3D眼鏡に近い原理です。左右の目の錯覚を利用して、像を立体的に浮かび上がらせるような仕組みになっております。見るだけでなく、これとトラッキングによる手の動きがしっかりとリンクしている点がやはりポイントです。最近では価格も随分と買い求めやすい価格に下がってきています。
教育現場での活用
上記で文科省が実証として計画しているように、職業経験・訓練がやはり一番親和性が高いです。これはビジネスの現場でのスキル獲得・研修などでの実績がたまってきたことにも起因しています。危険な場所での作業やめったに起こらないトラブルでの対応などを反復練習して学習するために利用されます。
教育での活用にあたっての課題
専用コンテンツが必要
3D映像を表現するにあたり、やはり専用のコンテンツ作成が必要です。まだこの分野での標準化が進んでいないこともあり、個別オーダーで作成することが基本となり、教育用となれば教科書メーカーのような企業が作成するか否かによってきてしまうのが現状です。企業内利用であれば統制内での責任で実施が可能ですが、このあたりはまだまだといった状況です。
HMDデバイスが推奨
スマホでVRを簡易に体験する方法もありますが、映像視聴のみであることから手の動きをトラッキングするような方法は専用のVRデバイスを購入するしかありません。教育業界ではGIGAスクール構想でPCやタブレットを管理し始めたばかりの状況で、新たに得体のしれないVRデバイスを購入・管理するのは敷居が高いですが、専門学校・大学などの高等教育機関であれば十分検討できる範囲かと考えます。
VR酔い
乗り物酔いと同じようにVR酔いというものがあります。おそらくは映像が動いているにも関わらず体は実際に動いていないという錯覚から起こることかと思います。また、明確な基準こそ設けられていないですが、小学生など小さい子供が利用することは非推奨とされていたり、長時間のVRデバイスの装着はまだ利用者への負担になるなどの課題もあります。実際つけてみると感じますが、眼鏡のように軽くはないのでそれなりに重さを感じます。バッテリーは、実用に耐える程度の時間は備えているものが増えているので、その点は不便しません。
まとめ
まだ時期尚早感があるようにも見受けられますが、専門性が高い領域から積極的な利用が進むことが予想されます。と言いますのも、FacebookやGoogleなどもこの分野には積極的に取り組んでおり、デバイスを中心とする技術進歩はこれから急速に進みます。さらには昨今のコロナ禍において、DX/バーチャル技術、オンラインコミュニケーションが急速に進んでいることから、今後注目の領域です。